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社会科・情報りてらしぃ物語

 

 

成田喜一郎

 

 

1 ツールのルーツを探れ

 

 これまでヒトは、どれだけの「ツール」(道具)に出会ってきたのでしょうか。

 

 私たちの遠い祖先である「化石サル」たちが、最初に手にした《石器》や《火》《言葉》から、現代人である私たちの目の前にある《電力》を使って動く《コンピュータ》や《情報》まで、「ツール」は様々に姿形を変えて来ました。

 

 今、私たちが、社会科の授業で《コンピュータ》を使って学習をするとき、まず、その「ツール」の「ルーツ」(根っこ)に立ち返っておくことが必要です。なぜなら、それまで「ツール」でないただの石ころだった物が「ツール」としての《石器》に変わるとき、何が起こったのかを探ることで、私たちが今使おうとしている《コンピュータ》にも予期せぬ出来事が起こりうることを予感させてくれるからです。

 

 かつて、中学校・高校で先生をしていた岩城正夫さんが、『原始技術史入門』(新生出版、1976年)という書物を書きました。その著書の中で岩城さんは、《石器》という「ツール」とヒトの歴史との対話を通してこんなことを考えています。

 

「道具は過去の記憶を呼び起こすための信号の役目を果したであろう。これが言語の起源と関係があるのではないかと私は考えている(略)。ともかく道具がとっておかれるということは、一方では再びそれが使用されるための準備になっていると同時に、他方ではかつて使用されたときの記憶を引き出すための信号の役割をも、結果的には果たすのである。」(p.33,34)と。

 

 まさに、《コンピュータ》は、過去の「記憶」を呼び起こすための信号を持った「ツール」ですし、また、新しい言葉や思考の起源となる「ツール」になるなのかもしれません。この「ツール」には、ただ、表面的に暮らしや学習が便利になったり、スピーディになったりすることだけではなく、何か私たちの内面に及ぼす不思議で魅惑的な力が潜んでいるのです。

 

 

2 ツールと「りてらしぃの冒険」

 

 その不思議で魅惑的な力を発見するために、私たちは冒険にくり出すことにしましょう。題して「りてらしぃの冒険」です。

 

 かつて、私たちの祖先たちが、《言葉》を発見したあと、さらに《文字》を作り、《書物》を著してきました。それは、歴史の事実です。が、人々が《文字》を読めて書けるようになるには時間がかかりましたし、今もなお、地球上には読み書きができない人々がたくさんいることも忘れてはいけません。特に、途上国にいる人々の……。

 

 その「読み書き能力」のことを英語でLiteracy(りてらしぃ)と言います。この言葉は、中学校の英語の時間に習う単語ではありませんが、ぜひ、知っておいてください。なぜなら、この「りてらしぃ」を身に付けることで人々が、「無知蒙昧(むちもうまい)」(難しい言葉です。でも、ぜひ自分で国語辞典を引いてください!)の世界から逃れ、これまでの人々が集積・蓄積・記憶した様々な知識と歴史や文化、そして《情報》を手にすることができるからです。

 

 そして、今や《文字》の「りてらしぃ」だけではなく、《電気》を使って動く《コンピュータ》を中心とした《情報》という「ツール」をあやつるための「りてらしぃ」も登場してきました。いわゆる「情報活用能力」と呼ばれるものです。

 

 いろいろなヒトがいろいろとその言葉の意味や意義を定め、定義していますが、ここでは、仮に、以下のような能力であると定義しておきましょう。

 

 「情報活用能力」とは、「様々な知識や資料・情報とそれを生かすための手段や方法を自分で選び、実際に活用していくための基礎的な力」(1986年の臨時教育審議会第二次答申の定義の要約より)のことです。

 

 具体的には、課題にとって必要な情報を集める力、収集した情報を分類・整理する力、課題にとって適切な情報であるか判断し必要な情報を選ぶ力、選択した情報を課題のために整理・再構成する力、処理された情報を友だちにわかりやすく表現し伝える力、友だちから伝えられたり表現されたりした情報の良さやより良くした方がいい点を見つけ評価する力などのことです。

 

こうして見ると、《コンピュータ》を中心とした《情報》という「ツール」の「りてらしぃ」は、ある課題の解決に向かってヒトとヒトとをより良く結びつけるために必要な力だということが分かってきます。

 

「りてらしぃの冒険」とは、私たちにとって、きっと素晴らしい発見や成長をもたらしてくれるのではないでしょうか。

 

 

3 ツールとローとの握手

 

 「りてらしぃ」は、私たちを「無知蒙昧」の世界からの脱出へ、また、ある課題の解決に向かってヒトとヒトとをより良く結びつけるための冒険へと誘い出します。

 

 でも、それはバラ色の世界だけではありません。光源が明るく、強ければ強いほど、その黒い影法師の色は黒く濃くなります。

 

 最近、ハッカーが官庁のインターネットのホームページを書き換えるという犯罪を犯したり、ある中学生がHPを通じた売買で「詐欺行為」を行ったり、この「ツール」をめぐる犯罪や「ロー」(Law、法)にふれる行為が増えています。その他、「表現の自由」や「名誉毀損」、「サイバーポルノ」、そして、私たちにもっともかかわりの深い「著作権」の問題も出てきました。

 

 コンピュータのソフトをふくめた著作物の「著作権」については、だれにとってのどんな権利なのか、私たちがしてよいこと、してはならないこととは何か、具体的に知らねばなりません。この「ツール」の「ルール」、それも権利と義務、自由と責任とが明確に示されている「ロー」をはっきり具体的に意識できていなければなりません。

「引用」「転載」「複製」とは、それぞれどうちがうのでしょうか。ぜひ、文化庁監修・消費者教育支援センター発行『めざそう!著作権なんでも博士』など「マルチメディア時代の出版と著作権 http://www.ktarn.or.jp/kurume-u-hp/yokoi95.html 」について学んでおきましょう。

 

 そして、その「ツール」と「ロー」とのかたい握手を忘れずに。

 

 

Copyright(C)Narita Kiichirou & 明治図書2000

 

 

 

 

 

 

 


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